ホセアの預言
預言者の一人、ホセア。
彼の預言は、王国の腐敗に対する断罪をもって語られる。
わたしは、かれらを死から救うことがあろうか。
死よ、おまえの災いはどこにあるのか。
陰府よ、おまえの滅びはどこにあるのか。
あわれみは、わたしの目から隠されている。
非常に厳しい、突き放した態度だ。
しかし、一転最終章では「愛の預言」が語られるのだ。
わたしは、彼らのそむきをいやし、
喜んでこれを愛する。
わたしの怒りは彼らを離れ去ったからである。
わたしはイスラエルにたいしては露のようになる。
彼はゆりのように花咲き、
ポプラのように根をはり、
その枝は茂りひろがり、
⋯⋯⋯⋯⋯
彼らは帰って来て、わが陰に住み、
ぶどうの木のように花咲き、
⋯⋯⋯⋯⋯
美しく、慈愛にみちた言葉である。
彼の言葉は私たちの心の根にも行き届く。
ホセアにはゴメルという妻がいた。
しかし、ゴメルは愛人に溺れ、棄てられ、娼婦に堕ちる。
ホセアは、そんな哀れなゴメルを買い戻すのだ。裏切られたのにも関わらず。
悲しみの奥深くから溢れ出す愛。
ホセアにはゴメルとイスラエルの人々が重なって見えたのだろう。
表面的な感情を突き抜けた先の普遍的な感情の存在をホセアの愛の預言は感じさせるのである。
(山形孝夫『聖書物語』より)